PART 1 「採取編」
海に行くと海水浴場の砂浜にも磯場にも必ずいるのがカニとヤドカリ達。詳しく見れば細かな種類に分かれるのでしょうが、基本的には、

ヒライソガニ ・・・ 小さくって背中の甲羅に模様が有ります。
イソガニ ・・・ ヒライソよりも一回り大きく、黒っぽい体。親爪が大きい。
ホンヤドカリ ・・・ 小さなヤドカリ君。巻貝の宿に入ってます。

の3種類を覚えておけば良いと思います。


ホンヤドカリ。右側がイソガニの子供かなぁ??
ヤドカリの宿である巻貝の種類は地域によって違います。
中身のヤドカリ君はどこも同じ(と思う、、)。


これがヒライソガニ(まだ子供)。今回の主役。
背中の模様に特徴があって、模様の形は固体によってすべて違う。
探せば「人面ガニ」も見つかるようです(笑)
手が小さいのがメス。裏返してお腹を見なくても雌雄の区別がつきます。
採取するときはメスガニを多く見つけてきます。
オスガニは乱暴で、数匹もいれば交尾できます。


持って帰るときは底の深いバケツを使い、余り海水を入れないように。
カニはエラ呼吸ですからたっぷりの海水が必要と思われがちですが、海水の酸素量は少なくって、特に夏場の水温が上がった状態ではすぐに酸欠になります。なので、口からアワをブクブクとさせながら空気と一緒に酸素を呼吸できるよう、少な目の海水を入れておきます。

釣具屋で売ってるポータブルのエアレーションを持っていけるなら最高。その場合はたっぷりの海水で運ぶのが最適です。

ここからが本題。
カニやヤドカリ、それから熱帯魚屋で見かけるヤマトヌマエビなどは、100%に近く天然物です。養殖ではないのです。

何故か?

それは、これらの類は「ゾエア幼生」で生まれてきます。このゾエア幼生は適度な海水濃度と、自然環境に限りなく近い綺麗な水質、温度管理、そして最も重要な「エサ」の都合で、人工的に繁殖させたり養殖することがほとんど困難なのです。
研究室などではゾエア幼生を発生させて、1齢2齢・・・と成長させる技術は有りますが、個人でこれをするのはまず不可能と思ってください。つまり、カニを飼育して卵を産ませて稚ガニをたくさん増やして大きくさせる、、それは無理です。縁日で昔はよく売られていた「丘ヤドカリ」もこの理由で人工繁殖出来ないため、すべて自然界から採取しており、今は絶滅危機の為にほとんど見かけなくなりました。

重要なこと!

カニもヤドカリも海水の生き物です。海水専用の水槽をまず用意出来なければ、磯から採取した後に持ち帰らないでください。結局死んでしまいますから可愛そうです。


40センチ程度の小型の海水タンク。

デジ研では90センチの大型海水タンクと小型の40センチ程度の海水タンクを持っていますので、その中に採取してきたカニやヤドカリ君を入れています。1年以上は生存しています。

重要なこと 其の2!

採取したヒライソガニは、飼育環境で交尾、抱卵させるのは難しいのも事実です。

90センチの本格的な海水タンク。

自然環境に近い状態で飼育すると、ヒライソガニでもメスは抱卵してくれます。但し、夏休みの自由研究用の為だけにこのセットを作るのは困難ですから、幼生の孵化まで観察する目的であれば、

採取するときにすでに抱卵している個体のみ見つけて持ってかえる。
それ以外は逃がす。


これが一番よいかとも思います。

カニやヤドカリの仕草は見ていて楽しいので、この機会に海水の水槽に挑戦するのも「大人の楽しみ」でやってみるのはどうですか?


次回は、デジ研がとらえた貴重な孵化シーンをお送りします。

デジタルカメラ大実験
自由研究編